IT成長企業は、IoTを安価で便利な道具として考え、IT停滞企業は、IoTを魔法の道具のように考える

IoTを導入する使用箇所が、屋外と屋内では考慮するところが大きく異なるということがITスキルとして重要です。
しかしIoTの導入を実際に経験されていない方は、どこでもIoTを利用すれば、簡単に必要な情報が取れそうだと、イメージされてしまうのではないしょうか。

目次
1.IoTの設置環境
2.IoTの屋外かつ広域設置の課題
3.IoTの測定頻度とバッテリーの関係

1.IoTの設置環境

最近はデジタルトランスフォーメーションが進展すると、ニュースなどでいろいろ取り上げられています。
そのためのデータを集める方法として、IoTの導入検討をされている中小企業の経営者の方々も多いと思います。

IoTのご相談では、いままで製造している商品にIoTの付加価値をつけてサービス化を検討したいというものから、工場や倉庫などにIoTを利用して生産性を向上したいなど、使用する場所や使用する環境も異なるいろいろなご意見を伺います。

もちろんコストをかければ、工夫しながら実現は可能ですが、IoTの一番のメリットは今まで無線通信や携帯電話網では、コストが合わなかったために検討が進まなかった部分を、低価格で実現するところですので、低価格でどこまで機能を実現できるかというトレードオフの関係が検討のポイントになります。

また消費電力を抑えて、電池の利用でも長期間利用が可能というところも特徴ですが、この長期間利用できる部分が、利用時間とデータ収集のトレードオフとなる場合もあります。

例えば、屋内でIoTを検討する場合には、通信の方法はLAN接続、WiFiなどの方法も検討出来ます。電源も比較的簡単な方法で確保ができる場合がありますので、代替手段の中から検討をすることができます。

2.IoTの屋外かつ広域設置の課題

ところが屋外に広く分散して設置となると状況は大きく異なります。通信方法、設置したネットワーク機器のソフトウェアの管理やセキュリティ、電源の取得方法など検討するところはたくさんあります。今回は電源に関わる利用時間とデータ収集のトレードオフの例がわかりやすいと思いますので、この点についてご紹介します。

屋外の場合は、仮に近くに電源があっても一つのIoTのために、電源を引くことはコストの面で無理があります。そのためバッテリーを利用することが多くなります。
自社製品にIoTを組み込む場合も、同じように組み込んだIoTの機器の電源をどうするのかが検討課題になります。

ところでIoTの紹介や記事で、「IoTは電池ひとつで10年間利用できます。」というような内容をご覧になった方も多いと思います。

IoTの例として、水道やガスのメーターの自動検針がありますが、求められる機能は以下のような内容です。
・測定する頻度は1か月に1回または2回程度の低い測定頻度
・メーターの検針情報くらいの少ないデータ量
・広いエリアに分散している大量の機器が対象
・低コスト
このような要件をもとに、記事の内容のようなIoTが紹介されています。

3.IoTの測定頻度とバッテリーの関係

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ところが、お客様の検討内容は詳細を確認していきますと、利用要件はじつにさまざまです。
今回ご紹介する例もつぎのような内容でした。

最初は1日に1回くらい測定できればよいとの条件でセンサーを調査しました。安定して必要なデータを収集できる機器は、次のような一体型センサーでした。
・毎日1回のセンシングを行い、ネットワークを通じてクラウドにデータを保管します。
・内蔵型電池で10年間利用できます。電池がなくなったら機器ごと交換になります。

その後、測定位置、測定内容、誤差などの詳細を詰めて行く段階で、情報の変化を細かくとって分析したいと要求が変わってきました。特に今回は本格運用の前段階の実証のため、特に詳細を把握したいとのことです。

測定頻度を毎日1回から、測定頻度が1時間に10回必要ということになりました。つまり6分ごとに測定してクラウドに保存することになります。

毎日1回の測定頻度ですと、1年間で365回、10年間で3,650回になります。変更後の内容になりますと、1時間に10回測定、1日に240回の測定です。そうするとわずか2週間ちょっとで3,650回を超えてしまうことがわかります。
最初の使用方法では、10年間使えるものが、測定する頻度が変わっただけですが、わずか2週間程度で利用できなくなってしまいますので、本格運用では実用に耐えないかもしれません。

ご紹介した例は、途中から情報収集を目的として、詳細なデータを取得するために頻度を増やして実証をしましたので、目的は十分に果たせました。
でも測定できた期間は、本当に3週間持ちませんでしたので、実用には無理がありセンサーの選定など最初からの再検討になります。

IoTでは、お客様の利用条件とセンサーやネットワークの利用条件を細かくすり合わせる必要がありますが、センサーの再検討や機器の見直しなどの手戻りを少しでもすくなくするために、IoTに供給する電源が容易に提供できるかどうかを最初に確認されてはいかがでしょうか。

ついつい、測定したい内容から検討が入りがちですが、制約の大きな条件を先に詰めておくと手戻りが少なくなり、検討が進めやすくなりますのでおすすめです。

最後までお読み頂きましてありがとうございます。今回のコラムが皆様の何かのヒントになれば幸いです。

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