IT成長企業は、
DXと通常業務は、別サイクルで推進し、
IT停滞企業は、
DXと通常業務を同じサイクルで取組む。

皆様の中では、改善活動を進めていると良くお聞きをしますが、最近よく耳にしますデジタル・トランスフォーメーション(DX)についても同時に進められているのでしょうか。
もし改善活動とDXを同時に進めるとした場合、どのような方法で進めるとそれぞれ成果がでやすいのでしょうか。

目次
1.改善活動
2.DXの活動
3.改善活動とDXの活動の組み込み
4.改善サイクルとトリプルループサイクル
5.SPDLIとは

1.改善活動

日々の改善活動は、毎日の業務の中から問題点や課題を見つけ出して、ひとつずつ改善を積み重ねることで、長期的には大きな成果につなげることを目的としています。

つまり改善活動の改善点は、日々の業務活動の中からの気づきがきっかけとなります。そのため業務からかけ離れた発想や気づきが生まれる機会は少ないといえます。

2.DXの活動

DXは今までにない新たな発見や取り組みによって、新たな価値を創造していくプロセスになります。
その点では、いままでの業務からの気づきというよりは、たとえば他業種の業務プロセスと比べて、抜本的な改革ができそうだとか、IoTのような形で、今まで見えなかった可視化や知見の蓄積によって、新しい方法がみつかりそうだとか、今までになかった取組みから生まれてくる形になります。

3.改善活動とDXの活動の組み込み

改善活動とDXの活動を比べると、検討する内容も検討する視点も大きく異なることがわかります。

それでは仮に改善活動の中にDXの活動を入れていくと、どのような状態になるのでしょうか。

先ほどの他業種の業務プロセスと比較するような内容であれば、改善のテーマを広げて他業種から学ぶとすれば、改善のきっかけが得られるようになります。
ただ目線が現状の業務の視点から、改善点を見つけるというアプローチになりますので、現状業務の延長になります。

これをDXの目線でアプローチをするとどうなるのでしょうか。
目線が、他業種の業務プロセスを現在の業務とそっくり入れ替えたとしたらというような大胆な目線になりますと、大胆な改革につながるヒントが得られるかもしれません。

このように検討する目線によって、得られる結果が大きく異なってきます。

これを薬に例えてみます。

漢方薬

漢方薬は急に回復することはありませんが、徐々に薬効が効いてきて長期的には大きな効果が出てきます。
改善活動は、漢方薬のような急な効果はなくても、長期的な効果がある点ではよく似ています。

新薬

一方、特定の症状によく効く新薬は効果も大きい代わりに、大きな副作用を伴う場合があります。
DXはいままでの方法を根本から変えてしまうようなことも含めて検討をするため、既存業務への副作用も多く含んでしまう場合が多くなります。

もしDXで副作用が全く無いような改革がたやすくでてきているのであれば、今までにもDXがどんどん進んでいるはずです。しかし現実はそうではありません。

DXの推進のむつかしさは、期待される効果と既存業務への副作用を比較して、副作用を抑えて効果を拡大できるような案にブラッシュアップしていくことが容易ではないからではないでしょうか。

このように検討する目線や影響が大きく異なることから、改善活動とDXを同じようなプロセスで進めないほうが、双方の成果は出やすそうです。

4.改善サイクルとトリプルループサイクル

ITコーディネータ協会のIT経営推進プロセスガイドラインには、IT経営の重要なフレームワークとして、下図の戦略経営サイクルが説明されています。

PDCAサイクル

出典: 「IT経営推進プロセスガイドライン」の戦略経営サイクルに追記

このフレームワークの特徴としては、3つのサイクルが回るトリプルループのサイクルとなっているところです。

  • 担当者のサイクル(青色)
    担当者は一番内側のPlan,Do,Seeのサイクルになります。
  • マネージャーのサイクル(赤色)
    マネージャーは、真ん中のPDCAのサイクルになります。これが改善サイクルです。
  • 経営者のサイクル(緑色)
    経営者のサイクルは一番外側のSPDLIのサイクルになります。
IT経営推進プロセスガイドライン

詳しくは以下の資料をご参照ください。

IT経営推進プロセスガイドライン(4ページ参照)

5.SPDLIとは

イメージ画像

このSPDLIは聞きなれないと言葉だと思いますので少し捕捉します。

経営の視点では、最初に戦略が重要になります。そこで最初に戦略(S)が最初にきます。

会社の戦略に基づいて、計画(P)を立案し実行(D)します。

実行から得られた評価を学習(L)し、イノベーション(I)につながる項目があれば、このサイクルで検討します。

しかし先ほどの新薬でご説明したとおり、大胆なイノベーションには大きな副作用を伴うことが多いため、本当に実現が可能かどうかを試行錯誤しながら見極めつつ案をブラッシュアップしていきます。
そのため実現可能な案が見つかるまで、この中でサイクルが回る形になっています。

日々の改善活動の中でDXにつながりそうな、良いアイデアが出た場合には、アイデアをすくい上げて、より上位のレベルで検討を進めることで、実現の可能性が高まるのではないでしょうか。

今後は企業のなかでもDXの検討を進める機会が増えていきますので、DXの推進に役立つ新たなフレームワークとしてご紹介しました。

最後までお読み頂きましてありがとうございます。今回のコラムが皆様の何かのヒントになれば幸いです。

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