IT成長企業は、
ITのスコープの範囲を明確にして開発し、
IT停滞企業は、
ITのスコープがあいまいのまま開発する。

プロジェクトの用語でスコープという言葉がありますが、聞かれたことはありますか。
仕事を進めるときの管理指標や、業務カイゼンの場では、QCDという言葉がよく使われますが、ITの導入ではスコープという内容がQCDとともにこの中に入っています。

ただあまり、この言葉が出てくる機会がありませんので、今回取り上げてみました。

目次
1.QCDとは
2.スコープとは
3.顧客の要求と仕様
4.スコープの見直し

1.QCDとは

最初にそれぞれの用語について説明をします。

QはQualityの品質、CはCostの費用、DはDeliveryの納期になります。

品質は、仕事に求められる質の基準を満たしているかという指標になり、ITでは利用に耐えうる状態を満足しているかどうかで評価されます。

費用は、業務やプロジェクトが、予定通りに進捗しているかどうかで評価されます。

納期は、商品や成果物の納品などにおいて、決められた期日を満足しているかどうかで評価されます。
ITのソフトウェアの開発の場合は、予定通りに開発が進捗しているか、最終的に決められた納期に収められるかどうかで評価します。

QCDの評価は単独でされるものではありません。
例えば、ソフトウェアの開発で予定通り納品されたとしても、品質が低ければ利用に耐えませんし、コストが予算より超過すれば成功とはいえません。
そのため業務やプロジェクトを進めるうえでQCDのバランスをとることが大変重要だと言われています。

2.スコープとは

しかしQCDのバランスに加えて、実はもう一つ重要な評価項目があります。それがスコープ(Scope)です。定常業務ではスコープは出てきませんので、聞きなれない言葉になりますが、プロジェクトでは要(かなめ)となることばです。

スコープという言葉は「範囲」という意味になります。仕事を進めるときの領域や範囲を「作業のスコープ」として表現することもあります。ITを導入する場合や、ソフトウェアを導入するときには、提供する機能の範囲やアプリケーションを開発する範囲を明確に決めなければなりませんので、必ずスコープという評価指標が入っているはずです。

ところがIT導入の場合に、この「スコープ」を利用者とベンダーの双方でよく確認しないまま、進められてしまうことがあります。その理由の一つとして、双方がスコープをよく認識していないことがあります。

3.顧客の要求と仕様

ソフトウェアを開発する場合に、利用者はこんなことがしたいという「要求」をあげ、ベンダーはこの機能があるという「仕様」を提示しますが、仕様が要求を満足するという手順がおろそかになっている場合や、スコープという共通言語で語られていないために認識のズレが生じる場合があります。

しかし、手順にもれがあったとしても、実際には利用者の要求を仕様が満足していることもありますので、この場合に手順の漏れという問題は発覚しません。

ところが、途中で認識のズレが発覚した場合には後が大変です。実際に認識のズレが分かるのは、お客様のテスト工程や納品前の確認作業といった後半の工程で見つかる場合が多いためです。

最初にQCDのバランスをとることが重要とご説明していますが、この段階で問題が発覚した時のQCDを確認してみます。

まずDの納期ですが、もし機能の漏れがありこれから手直しをするとなると、納期の遅れにつながります。次にコストですが、手直しをするとなると追加コストが発生します。最後に品質ですが、要求を満足するものではないため、品質も満たしていないことになってしまいます。

4.スコープの見直し

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この場合どちらに原因があるかで、もめることになりますが、もともとスコープが曖昧の場合はなかなか決着がつけられないことになってしまいます。このような時に、妥協点を見出す一案がスコープの見直しになります。

スコープの範囲を見直すことや、スコープを縮小することで、納期をリカバリーし、支出コストを抑制し、必須の機能を満足することで品質を向上を行い、QCDのバランスをとることも可能になる場合があります。

もちろんこのような案は最善策ではありませんので、最初に双方の認識のズレをなくしておくことが最重要ですが、万一問題が発生した場合の解決策の一案として、「スコープを絞る」ということを記憶に留めておかれると、いざというときに役立つのではないでしょうか。

最後までお読み頂きましてありがとうございます。今回のコラムが皆様の何かのヒントになれば幸いです。

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