ITを古くから強みとして導入されていた企業の中には、重要な基幹システムを長期間利用し続けていることにより、既存システムがITの重荷に変化してきていると感じ始めている企業もあるのではないでしょうか。
今回は、経済産業省の「D X レポート2~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」示されている懸念点をもとに、ITが重荷と感じてしまう点について掘り下げていきます。
目次
1.2025年の崖とは
2.既存システムの課題
3.既存システムが重荷になる要因
4.レガシーシステム
5.レガシーシステムの保守と運用
6.ラン・ザ・ビジネス
7.レガシーシステムのブラックボックス化
8.レガシーシステムの保守、運用の属人化
9.既存システムのチェック推奨
1.2025年の崖とは
平成30年9月に経済産業省から発表されました、D X レポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~、をご覧になったことはありますか。
このサマリ版の冒頭では、以下のように述べられています。
多くの経営者が、将来の成長、競争力強化のために、新たなデジタル技術を活用して新たなビジネス・モデルを創出・柔軟に改変するデジタル・トランスフォーメーション(=DX)の必要性について理解しているが・・・
出典:平成30年9月に経済産業省、D X レポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~
・既存システムが、事業部門ごとに構築されて、全社横断的なデータ活用ができなかったり、過剰なカスタマイズがなされているなどにより、複雑化・ブラックボックス化
・経営者がDXを望んでも、データ活用のために上記のような既存システムの問題を解決し、そのためには業務自体の見直しも求められる中(=経営改革そのもの)、
現場サイドの抵抗も大きく、いかにこれを実行するかが課題となっている
→ この課題を克服できない場合、DXが実現できないのみでなく、2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性(2025年の崖)。
資料の中では、2025年の崖を以下のように表現しています。
今後のデジタル・トランスフォーメーション(DX)を推進するためには、既存システムまたはレガシーシステムと呼ばれる、現行のシステムの影響が大きい。
既存システムの課題を克服することが難しくなるときは
・DXが実現できない
・多くの経済損失が生じる可能性
つまり、既存システムまたはレガシーシステムの課題を克服して、新たなシステムへの移行ができることが重要になります。
2.既存システムの課題
既存の情報システムは、企業の基幹システムとして長年利用されてきたものであれば、いままで企業に大きな貢献をしていることでしょう。
多くの投資を行い、業務の中核として利用してきた情報システムは、会社の強みとして企業の成長を支えていたのではないでしょうか。
ところが資料によりますと既存システムがデジタル・トランスフォーメーションに大きな影響を与えて、既存システムの課題克服がDX推進のカギとなっているようです。
それでは、このような重要なシステムが、どうしてDX推進の足かせになってしまうのでしょうか。
既存システムが課題となる点は、次の項目が挙げられています。
長期間重要なシステムを利用されている場合は、以下の項目が該当するかぜひチェックをしてみてください。
- レガシーシステムを抱えている
- レガシーシステムの保守・運用にIT・ソフトウェア人材を割かれている。
- ラン・ザ・ビジネス予算に80%以上かかっている。
- レガシーシステムがブラックボックス化している。
- レガシーシステムの保守・運用が属人的で、継承が困難となっている。
3.既存システムが重荷になる要因
またこれから基幹システムを導入される場合には、上記の項目が該当することにならないように、注視していくことが重要となるでしょう。
既存システムが重荷になる要因については、レガシーシステム自体、保守と運用の費用、ラン・ザ・ビジネス、システムのブラックボックス化、保守・運用の属人化などがあります。
4.レガシーシステム
レガシーシステムとは、長期に渡り利用している重要なシステムになります。
長期間利用しているため、技術的には安定をしているものの、最新の技術と比較すると性能が劣ってきたり、コストがかかってきたりしているものが多くなります。
コストの増加として考えられるものには、以下のものが考えられます。
- サーバーや端末などのハードウェアの設備費用
- サーバーや端末の保守費用
- ソフトウェアの改修費用
- ソフトウェアの保守費用
- レガシーシステムを運用するための費用
5.レガシーシステムの保守と運用
レガシーシステムの保守や運用に、貴重なIT人材の多くの工数が割かれてしまいますと、新たなITシステムの検討や新技術の導入などに時間を割くことが難しくなってきます。
定常的に貴重なIT人材が既存の保守や運用への負担が増えてきますと、DXのような新しい取り組みをすることが、したくとも全く動けない状態に陥ってしまいます。
6.ラン・ザ・ビジネス
ラン・ザ・ビジネスとは、レガシーシステムを維持・運営していくために、継続的に発生する費用です。運用や保守費が主なものとなりますが、毎月費用が発生していきますので、予算では一定の割合を占めてきます。
これらの費用は急に増額することもないのですが、急な削減もサービス低下や品質低下を招くリスクがあるために難しい項目になります。
この費用がシステムの予算の80%以上がかかってしまうと、新規ITの投資に費用が割けなくなりますので、DXのような新たな投資が進まなくなるリスクが増大します。
ラン・ザ・ビジネスの費用は、削減が難しいことを考えますと、新たなシステム導入をして費用を削減する方法がありますが、ここでも新たな投資に抑制がかかってしまうというジレンマが発生します。
7.レガシーシステムのブラックボックス化
レガシーシステムがブラックボックス化しているという状況はどのような状況でしょうか。
自社で開発された重要なシステムであるので、内部の状況がわからないということは考えられないと思われますが、利用している期間が長いとこのようなことも起こりえます。
例えば、利用しているシステムが長期にわたると、現場に要求に合わせてシステムを改修することが発生します。システムの改修が繰り返されると、徐々につぎはぎのようなシステムになり、システム全体をわかる人が徐々にいなくなってしまいます。
このようなことがブラックボックス化につながります。
8.レガシーシステムの保守、運用の属人化
システムを長期に利用していますと、同じようなことが保守や運用でも起こります。保守や運用も長期間になると、保守や運用のルールの変更が都度発生します。
保守や運用のマニュアルが都度整備されていれば、問題はないのですが、マニュアルの整備があいまいになると、運用やルールが徐々に属人化していきます。
そうなってきますと、そもそもこのルールがどうして作られたかもあいまいになってきますので、運用や保守の継承が難しくなってきます。
9.既存システムのチェック推奨
これらのことが、新たなシステムへの移行の妨げになってきますので、長期間に渡りシステムを利用されている方は、ぜひ一度チェックをしてみてください。
後編では、これらの要因をハードウェアとソフトウェアの視点で掘下げ、対策についても掘下げをしていきます。
最後までお読み頂きましてありがとうございます。今回のコラムが皆様の何かのヒントになれば幸いです。
コラム更新のお知らせをお届けします。ぜひご登録ください。