IT成長企業は、
小さな変化の積み重ねに敏感だが、
IT停滞企業は、
小さな変化の積み重ねを気に止めない。

売上や利益が順調であると、現場の営業担当者や営業マネージャーは、取引先の変化が起きていることの報告を上げる必要がないと思うと、重要な情報が上がらなくなりますね。

これって危険!!

コミュニケーションとしては報連相の問題でもありますが、ITマネジメントの観点では、情報の変化の可視化の問題ともとらえることができます。

目次
1.取引先の変化をウォッチ
2.変化への対応策
3.小さな変化の継続は、当事者は気がつきにくい
4.まとめ

1.取引先の変化をウォッチ

先日、中小企業の経営者の方と自社の事業の状況を振り返る話題で話していましたところ、経営者の方から、「そういえば売り上げは順調なので、あまり意識していなかったのですが、取引先の業種や業態が近年大きく変わってきているのではないかな」と言われていました。

売上や利益が順調である場合、取引先の業種や業態が変わってきていることは、現場の営業担当者や営業マネージャーは当然気づいているとしても、このような変化が起きていることを、売上や利益が順調であるがゆえに、あえて上への報告は上げる必要がないと考えてしまう可能性があります。そうなった場合には、経営者はよほど注意して変化をウオッチしていないと気づかずに見過ごしてしまうことになったとしても決しておかしくはありません。

短期的には売上や利益が順調であっても、得意先の業種や業態が変化してきているのであれば、いままでの既存顧客層が減ってきた理由があるはずです。
一方で新たな顧客層が生まれてきていることから増えてきた理由があるはずです。

全体に影響を及ぼさないほどの小さな変化であれば、それほど気にする必要もないと思いますが、いままでのメインの顧客の業種や業態が、全く別の新たな業種や業態と主従が変わってしまうほどの変化であれば、変化を詳細に確認する必要があります。

単純に考えれば、既存顧客の層が維持できていて、さらに新たな顧客層が創出できているのであれば、売上や利益は増加すると思われますので、販売チャネルが分散し販売強化が図られていることで、非常に良い評価となりますが、順調であっても売上や利益の増加が見込めない構造であれば、将来不安な要素を含んでいると考えた方が良いのではないでしょうか。

そこで具体的な対策の一例をご紹介します。

2.変化への対応策

特に中長期の観点から、いま起きている変化が今後どのような影響を及ぼすかを分析し、分析した情報から将来を予測します。将来の予測に対してリスクとなりそうな点をあらかじめ洗い出して、それぞれに対策の準備をしておきます。

リスクが顕在化しなければ、そのまま何事もなかったかのように進めれば良いでしょうし、万一リスクが顕在化した場合は、その時点で用意した対策を打つことができれば、短時間にリスクを最小化することができます。

変化に全く気付かずに事業を進めた場合でも、逐次対応でそのまま順調に継続することも考えられますが、問題が大きくなったあとにようやく気が付いて、急遽対策を検討しはじめ、その後に応急の対策を実施するような場合は、現状を維持したまま、問題点の把握から同時並行で始めることになりますので、社内全体に非常に大きな負荷をかけながら進めることとなります。

将来を見据えて常に対応策を検討する作業は、発生するかどうかも分からないため発生しなければ一見無駄な作業となります。しかし、リスクを確認しない状態で後に問題が発生した場合には、急遽、対策を検討し、実施し、状態が収まるまでの時間は、経験上、発生前に検討する時間に比べ、はるかに多大な時間がかかり、多大な費用を費やすことになります。一度このようなことが起きると結果として、企業は大きなダメージを受けますので、注意が必要です。

3.小さな変化の継続は、当事者は気がつきにくい

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また、ゆるやかな市場の変化や顧客の価値観の微妙な変化などは、徐々に変わってきますので、その業界の内部にいる人は気がつきにくいという特徴があります。
むしろ外部からたまにその市場や価値観の変化を見る人は、頻繁にみないため変化を大きくとらえることとなり、かえって気がつきやすくなる場合もあります。

内部からの変化の情報収集や外部からのアドバイスの活用などを通じて変化に気づきやすくするための環境は整えて置くことが望ましいのですが、そもそも変化とは何かという基準や指標のようなものがあって、それらを現状と比較することで差が発生したことがわかるということになります。

例えば、会社には長期ビジョンが策定されていて、長期ビジョンを目指すために、中期や短期で達成するための中間の計画や、達成するための具体的な目標設定がある場合には、目標を達成するための行動計画も定められていると思います。

もしこれらの目標設定がされていれば、今回の例のように営業活動の販売チャネルや販売先が変化してきたときは、定期的に目標と実績内容を比較することができるため、より変化に気づきやすくなります。

4.まとめ

差が大きな変化となりそうな時は早めに対策を打つことができますし、社内への方針転換などの周知や情報共有もしやすくなります。必要であればビジョンを見直す良い機会になります。

もしビジョンが未作成の経営者の方や、ビジョンの見直しを長期間していないために形骸化しているようでしたら、変化に気づくリスク管理のツールとして、一度作成や見直しをされてはいかがでしょうか。社長の思いをしっかり反映しているビジョンは、さまざまな場面で有益に活用できますので、ビジョン作成のひとつのきっかけになれば良いと思います。

最後までお読み頂きましてありがとうございます。今回のコラムが皆様の何かのヒントになれば幸いです。

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